Vol.2ディレクターで話し合った結局ディレクションって何?(前半)
ディスカッション
こんにちは!ディレラボメンバーの田中です。「ディレクションって何?」シリーズの2回目、今回はメインのディレクター会です。
前回の非ディレクター会では「ディレクション」という言葉に対するモヤモヤが多く挙がりました。そのモヤモヤは今回のディレクター会で晴れるのでしょうか?
また私はデザイナー・コーダーの立場ですが、ディレクターが普段何を意識して仕事しているのか聞く機会は少ないので、色々勉強できたらいいなと思っています。
では改めて今回は第2回目。ディレクターの皆さんでディスカッションしてもらいました。(今回はボリュームが多いので、前後半に分かれています。)
参加者の紹介

岡本
岡本 悟(@molt0123)
本日の司会進行役。
WEB系広告代理店のデータアナリスト・戦略プランナーとして、自動車、食品、日用品、金融などさまざまな業界のデータ活用・コミュニケーション戦略立案を担当。
本日の司会進行役。
WEB系広告代理店のデータアナリスト・戦略プランナーとして、自動車、食品、日用品、金融などさまざまな業界のデータ活用・コミュニケーション戦略立案を担当。

セキ
セキ リョウスケ(@achrored)
経験者とタッグを組むクリエイティブディレクターとして事業の成長をサポート。サッカーと海外ドラマ好きでチョコドーナツに弱い。
経験者とタッグを組むクリエイティブディレクターとして事業の成長をサポート。サッカーと海外ドラマ好きでチョコドーナツに弱い。

しまむら

高橋 奨
高橋 奨(@takahashi_ssm)
WEB&印刷のディレクター/デザイナー。デザイン事務所ARATA DESIGN WORKSを運営。
WEB&印刷のディレクター/デザイナー。デザイン事務所ARATA DESIGN WORKSを運営。

QAZ
「ディレクション」って立場で異なる?

岡本さん
今回も司会進行を務めます。よろしくお願いします。第2回目はディレクターの皆さんに集まってもらいました。まず始めるにあたり、皆さんの現状のお仕事やバックボーンを教えてください。

セキ
主に子供向けのサッカーチームをしている会社や専門学校などへ総合的なクリエイティブに全面的に携わっています。ずばり〇〇というのが難しいのですが、企画に始まり、相手のクライアントの人たちをマネジメントまで含めて総合的にディレクションしています。

しまむら
イベントのディレクションをしています。元々は大道芸をしていて、その出演者さんの斡旋として今の仕事に就きました。パーティ・結婚式の二次会などのヒアリングから当日の取り仕切りまでやっています。

高橋
僕は元々印刷会社に勤めていて、直接お客様から何を作りたいかのヒアリングもしていました。その会社は2年前に辞めて、webと印刷と写真・動画など様々な制作に関わっています。元々は営業なんですが、その時からディレクションをしていて、それに加えて今は手を動かすデザイナーもやっています。

QAZ
広告代理店でプランナーをしています。広告代理店といっても、クライアントの業界は大学と専門学校に限定されています。社内には制作チームがいないので、外部のデザイナーさんや、カメラマンさん、ライターさんと組んで仕事をしています。その前は8年くらいデザイナーをしてました。会社での肩書きがディレクターではなくプランナーとなっているのは、データを見ながら戦略を考えるようなマーケター業務もあり、範囲が広いからです。

岡本
セキさんやしまむらさんのようにクライアントをディレクションする場合と、高橋さんとQAZさんの制作面のディレクションの言葉は違うなと思いました。

高橋
皆さん色々ありますよね。共通項はあるにせよ、それぞれの領域でずいぶん見ていることって違うよなって。

岡本
ですよね。「ディレクション」って言葉の幅が出るなって感じます。
ディレクターそれぞれの「ディレクション」

岡本
では質問の1つ目にいきましょう。1つ目はあなたにとっての「ディレクション」を一言で答えてもらいました。アンケートを見ると皆さん洗練された言葉を使ってますが、ふだんから考えることはあるんですかね?(※アンケートの回答は下画像参照)



セキ
めちゃめちゃ考えますよ(笑) 仕事上ではあんまりないですけど。SNSとかでそういうワードが出るたびに、ディレクションって何だって考えたりしますよね。

高橋
考えることってそれぞれの立場で違いますよね。僕の場合は「整理整頓」で、それはチーム内のタスクを整理するのが大事だと思ったからで。QAZさんの「前に進める」っていう答えはお客さんの前を行くっていう意味もあるかもだし。

岡本
そうですよね、具体的にお仕事の中でどういう時にこういう言葉を思い浮かべますか?
例えばセキさんの場合は「最適化」ですが、どういうシーンでその言葉を考えますか?
例えばセキさんの場合は「最適化」ですが、どういうシーンでその言葉を考えますか?

セキ
今の仕事の前は、広告代理店の下でデザイナーとして働いてました。広告代理店が入るような案件って、いろんな人がそれぞれの思惑で関わって一つの仕事ができていってるんですよね。その中で良いものを作るにはうまい具合にみんなが噛み合わないといけないんですよ。最高なものを作りたいって皆思ってても、その「最高」が各々ずれてるかもしれない。各々の最高よりも、その時の外部要因や環境・制限の中で最も良いものを作るには、「最適化」を目指す事になると。そうすれば何事に関しても最適に進めていくし、最適なことは何か考えていくし、と思ってチョイスしました。

岡本
なるほど。
ちょっと前後するんですが、今のセキさんのお話には次のアンケートの質問だった、「ディレクションに特に必要だと思う3つのスキル」での回答が入っていたなと思いました。普段の現場でそういう(最適化を見据えた)コミュニケーションは意識してます?
ちょっと前後するんですが、今のセキさんのお話には次のアンケートの質問だった、「ディレクションに特に必要だと思う3つのスキル」での回答が入っていたなと思いました。普段の現場でそういう(最適化を見据えた)コミュニケーションは意識してます?

セキ
そうですね。クリエイターは良いものを作りたい。営業は営業のやりやすさ、経営者だと売り上げ伸びるとかかな。立場によって目的が全然違うので、意識的にずれてるものを共通化して、1つのものを目指しましょうっていう目的意識はメンバーに強く持たせるようにしてます。その上で、各々の役割で何ができるかを考えます。さらにそれらが上手く回るように交渉したり、これを達成すればこういうメリットがないか?という感じでモチベーションをコントロールしてあげるとか。まぁ実際はその時、その人に合わせてって感じですかね。こうすれば、っていう必殺技みたいなのはないですけど。

岡本
一言で表せるというよりは、コツコツ積み上げていくイメージですね。

セキ
相手の性格とかを想定して、雑談から読み取るって感じですかね。この人は営業だからこうだ!っていう先入観は持たないようにしています。

岡本
ありがとうございます。
ここで一旦話を戻しますね。ではしまむらさんはいかがでしたか?
ここで一旦話を戻しますね。ではしまむらさんはいかがでしたか?

しまむら
僕は対クライアントと対パートナーの場合でそれぞれのディレクションを考えました。例えば結婚式の二次会であれば、雑談から2人が本当にやりたいことや本音を拾ったりします。 馴れ初めを何となく聞いてみたりとか、旦那さんだけ乗り気だなとか。対法人であればFacebookとか見て事前に相手の背景などを想定することもあります。イベントもあくまで手段なので、それを通して何がやりたいのか、最終的にその目的に近づけるようにします。スタッフに対しても、休憩中に会話からそれぞれの特性とか、気にしていることを考えるようにしています。プロフィールなどのある程度の情報は事前に分かりますし。どちらの場合もその人がやりやすいような環境になるように意識します。

岡本
しまむらさんも次の質問の「終わりを思い描く」という回答が、今の内容にも反映されてますね。

しまむら
そうですね。さっきもあったように、イベントの終わりを思い描くことが大事で、あとは何を成し遂げたいかもそうだし、各々のゴールとしては、大きな共通のゴールとそれぞれで別のものがあると思っています。

岡本
ありがとうございます。
では次に高橋さんは「整理整頓」とお答えいただきました。
では次に高橋さんは「整理整頓」とお答えいただきました。

高橋
整理整頓は・・・打ち合わせの最初ってとっ散らかってること多くないですか(笑)
とりあえずカッコいいもの作りたいとか、売り上げ上げたいとか。それらを、例えばそれを数字に置き換えたりして、整理するのがディレクターですね。そしてゴールが決まったら、どんな手段・メンバーがいるなどの整理整頓がまたあって。
とりあえずカッコいいもの作りたいとか、売り上げ上げたいとか。それらを、例えばそれを数字に置き換えたりして、整理するのがディレクターですね。そしてゴールが決まったら、どんな手段・メンバーがいるなどの整理整頓がまたあって。

岡本
営業であれば、売り上げ上げたいなどクライアントの一番最初の目的に比重を置くこともありそうなんですが、そうではなく、実際はそれ以外を求めてるんじゃないかって察知するきっかけはありますか?

高橋
それはですね、コスト、納期、品質。
これらがお客さんとずれてないか確認するんです。あと品質の基準ですね。ここまでの品質はちゃんと担保して出す、ってラインは確認しとかないといけない。その上で期待値を上回るってのは大事な部分じゃないですかね。
これらがお客さんとずれてないか確認するんです。あと品質の基準ですね。ここまでの品質はちゃんと担保して出す、ってラインは確認しとかないといけない。その上で期待値を上回るってのは大事な部分じゃないですかね。

岡本
品質の基準を確認してのディレクションというところに、次の回答にあった「設計」も関係してきそうですね。

高橋
そこまで汲んでいただけると話が早いです(笑)
例えばこの品質ならこのくらいのスケジュールだなっていう工程を設計します。その考え方は、他のクライアントでも、対チームに対しても同じですね。
例えばこの品質ならこのくらいのスケジュールだなっていう工程を設計します。その考え方は、他のクライアントでも、対チームに対しても同じですね。

岡本
ありがとうございます。最後にQAZさんお願いします。

QAZ
はい。この質問考えてる時、カッコいいこと書こうと思って家の本を読んだんですけどそれだとしっくりこなくて(笑)。結局本音に立ち返りました。「前に進める」っていうのは、まずきちんと納品すること。それによって、今のクライアントの状態を目的に近づけること。それは売り上げでも、よりブランドを認知させるでも何でもいいんですけど。あと、今の僕の仕事で行くと、クライアントの先のクライアントって高校生なんです。大学受験ていう大事な時の高校生が一歩前に進めるようにしたいという思いもあります。
というのも以前ある学生を取材したんです。
その人は千葉出身で、元々千葉で国立の大学受かってたんだけど、両親を説得までして関西の大学に入ったんですよね。取材の中で、何で関西の大学にしたのか聞いたら、その大学の合格通知と一緒に入ってたパンフを見たからだそうで。そのパンフを見て、自分のいく大学はこっちだって思ったと。 その人、結局首席くらいで卒業したのかな。
で、彼の言うパンフって実は僕が作ったやつだったんですよね。その経験から、自分が人に影響を与える仕事をしてるんだなって大きく感じて。
あとは僕は外部のパートナーと組んで仕事をするので、彼らに「この仕事は自慢できそうです」とまで思ってもらえたらハッピーだなぁと。
というのも以前ある学生を取材したんです。
その人は千葉出身で、元々千葉で国立の大学受かってたんだけど、両親を説得までして関西の大学に入ったんですよね。取材の中で、何で関西の大学にしたのか聞いたら、その大学の合格通知と一緒に入ってたパンフを見たからだそうで。そのパンフを見て、自分のいく大学はこっちだって思ったと。 その人、結局首席くらいで卒業したのかな。
で、彼の言うパンフって実は僕が作ったやつだったんですよね。その経験から、自分が人に影響を与える仕事をしてるんだなって大きく感じて。
あとは僕は外部のパートナーと組んで仕事をするので、彼らに「この仕事は自慢できそうです」とまで思ってもらえたらハッピーだなぁと。

岡本
印象的なエピソードありがとうございます。QAZさんは次の質問の1つに「先読み力」を挙げられてますが、今の高校生が大学生になった後の生活を考える・・・っていう観点でしょうか?

QAZ
先読み力って色々な意味を含んでますけど、それもありますね。自分たちの広告やパンフを見た高校生がどんな選択をするのかとか。あとは不本意な学生が入学すると、後々中退したりなどで大学側にも良くない。1つの事象からどんなことが起こりうるかは考えますね。あと案件として見たときに、どんなリスクがあるかなどを予測する意味もあります。

岡本
「断捨離力」も興味深いですね。

QAZ
クライアントって基本ワガママなのであれやこれや言うわけです(笑)売り上げも伸ばしたいし、カッコよく見られたいし。でも1度にそれらを達成することは難しいので、最優先事項を絞るのは大事です。あと制作過程で内部外部といろんな人と関わるので、意見に振り回されないように軸を決めることも必要ですね。

岡本
なるほど、ありがとうございます。
ちなみに2個目の質問だった「ディレクションに必要なスキル3つ」に入りきらなかったものってあります?
ちなみに2個目の質問だった「ディレクションに必要なスキル3つ」に入りきらなかったものってあります?

セキ
僕はあんまりあれもこれもなくて、正直これ以外に思いつかなかったです(笑)最初に答えた「最適化」はずっと自分の中で考えていて、今回はそれを細分化して3つ書いたんです。

岡本
意外とスパッと答えてもらったんですね。

セキ
でも他の方の意見を聞いてると、QAZさんの断捨離力って確かにそうだなと。僕は最初のうちは結構ストレートにお客さんに言ってて(笑)「これもう捨てましょう」とか(笑)でもストレートに言うと、お客さん的にも捨てづらいじゃないですか。だからこれは最優先でやりましょうっていう意識付けは大事かなと。そう言う意味では「目的意識の強烈化」も同じく最優先事項を意識させることなので、含まれてると思います。

岡本
確かにそうですね。

しまむら
僕もセキさんと考え方は近くて、100個ある大事なことを3つにギュっとしたイメージです。 あとは言い方の問題で、「終わりを思い描く」は高橋さんの設計と似ているし、「コミュニケーション能力」にはヒアリングも含まれている。この3つが揃っていれば、経験なくてもディレクションできるんじゃないかなって思いますね。

岡本
高橋さんもお2人と同じく、優先度でピックアップしたというよりは3つにまとめた感じですか?

高橋
そうですね。

しまむら
細かいことを言っても、結局どれかしらに関連してくる気がします。

高橋
そうなんですよ。カッコいいこと書きたかったんですけどね(笑)

QAZ
結局ディレクションって色々あって、自分の経験の中でこれが大事だと思ってるんですよね。同僚を見てると、分析力に長けた人や、ある意味強引なリーダーシップがある人もいるんですよ。自分のスタイルや業種で変わってきそうですよね。

高橋
そのスタイルの違いって、お客さんに対するKPIが何なのかでも変わるんですかね。

QAZ
あとは含まれてるものもあって、例えば断捨離は高橋さんの整理整頓も含んでると思います。こんまりさん風に言うと、ときめくもの探しませんか、みたいな(笑)
ディレクター会の前半はここまでとなります。色々なスキルが求められるディレクターですが、その根本的なスキルは皆さん共通しているようですね。
後半記事では、前回の非ディレクター会であがった質問に答えていただきます!ディレクションで気をつけていることは?スキルと人柄どっちが大事?色々な疑問に対する皆さんの回答に注目です!
ディレクター会後半記事はこちら!
編集:ディレラボ広報チーム
岡本 悟 @molt0123
QAZ @calamarhythm
木村ゆきえ @fulllunland
じゅん @mintmint824
セキリョウスケ @achrored
校正:MIKA @MIKA75328734